〜そして伝説へ〜
【前編】
| 大学時代──。私には常に行動を共にした友人が2人いた。そう。エロゲームで登場した『あの』2人である。 当時、我々は同級生から「三大神」の名で一目置かれる存在であった。 圧倒的な戦闘力を持っていた“武の神”黒田(仮名)。彼は一見、スリムで長身のモデル風イイ男なのだが、ゲームセンターのパンチングマシーンをハイキックで一蹴し(禁止されています)、周囲のド肝を抜いた極真空手の猛者であるが、ハイキックと同時にお気に入りのレザーパンツのお尻を真っ二つに引き裂いて失笑をも買った憎めない男であった。 要領が良いのか、さほど勉強しなくても常に成績上位をマークする“智の神”長谷(仮名)。彼はガリ勉タイプではなく、講義中はいつも週刊誌(ジャンプ・マガジン・チャンピオン・etc…)を愛読し、サボる時は我らと一緒にサボって遊び、夜は試験間近であっても平気で徹夜麻雀に同席するような男であった。その体たらくぶりたるや飛ぶ鳥を落とす勢いであるにも関わらず成績はキッチリ上位を抑えているから、友人としては頼もしくもムカつく存在であった。 三大神最後の私は、時を司る“時の神”と呼ばれていた。 いまだにサッパリ意味も役割も分からない。 彼ら曰く、天性の危険回避能力、そして彼らの能力を最大限引き出し刺激を満たす遊びを提供するプレゼンテーション能力などにより、そう呼称した。と言うのだが、 やはり“時”は関係ない。 思い当たる節があるとすれば、深夜の洗車場で『スーパーサイヤ人』という遊びを考案した時くらいである。それは単純に“人はどこまで高く空を飛べるのか”を競うロマンあふれる遊びであり、ともすれば似たような遊びは全国で存在しているのかも知れない。 ジャンパーを決め、残りの2人はジャンパーの左右の脇をそれぞれシッカリと支える。そしてジャンプするタイミングにあわせて両脇の人間が思い切り上空へ放り投げ、3人のパワーでハイジャンプをするというシンプルなものだった。 どこまで電灯の上部にタッチ出来るかで勝敗を決めよう、という趣旨であったが、ファースト・トライでアクシデントが発生し、残念ながら以降その競技が行われることはなかったのが心残りだ。 ファースト・ジャンパーであった長谷を上空へ羽ばたかせる瞬間の呼吸が合わなかったのか、黒田が何も考えず力にものを言わせてフルパワーでスローしたのが原因なのか、 予定ではロケットのように真っ直ぐ上空へ飛ぶはずの長谷の身体は途中でブ−メランのごとくくの字に曲がり、 『べちゃっ』という音を立てて地面に落下してしまったのである。満足に受け身も取れずに叩きつけられ、しばらく呼吸ができなかった長谷は、ゴールしたマラソンランナーのようにひゅーひゅーと呼吸を整えながら 長谷 「時空を超えた気がした…」 と呟き、選手生命を絶たれてしまった。私が“時を司った男”と言われたのは、おそらくそれからであろう。 ともあれ、生い立ちも性格も全く異なる我ら3人は(だからこそかも知れないが)非常にウマが合い、何をするにも行動を共にしていた。 我々は弱者をイジメるような事はなく、むしろ“不当な権力を持った強者”にこそ立ち向かっていくようなチームだったので、後輩はもちろん同級生からの人望も厚い方だったと自覚している。そんなある日、我らが天誅を下すべきターゲットが現れた。 ターゲットは同じゼミの池江(仮名)。大学ではありがちな『年上の同級生』である。2歳年上の彼は同級生であるにも関わらず、年上風を吹かして『さん』付けを強要し、親のスネを囓ってベンツを乗り回すような哀れで鼻持ちならない男であった。 我々3名が『さん』付けをする事は一度も無かったが、他の同級生は年上という事実に萎縮し、釈然としないながらもどこか後輩っぽい扱いをされていた。 バカモン。 そもそも黒田を見ろ。 黒田だって1歳年上なのに、オマエ達から「バカ呼ばわり」されて笑っているではないか。(←だからバカ) ある日、気の弱そうな同級生が、池江の使い走りとして学食のパンを買いに行かされていた。この同級生は麻雀ではカモにされ、たまに勝っても踏み倒されているとの情報も入っている。池江のパンとジョージアを抱えてショボクレて歩く彼の背中に「ドナドナ」を感じた時、我ら三大神は粛清の意志を固めたのだ。 決行日はゼミ旅行。心に流れるは『必殺!仕事人』のテーマ。今さら言うまでも無いが、我々はこういうくだらない事に関してはノリノリになる風潮がある。 もう誰も我ら3人を止められやしない。(“暴走特急@セガール×3”状態) ──そしてゼミ旅行当日。 まず我らはゼミの教授に根回しをし、極秘裏に部屋割りを操作した。当然、仕組んだのは三大神+池江の4名部屋である。唯一屈服しない我ら3人と同部屋となった池江はさぞかし面白くなかっただろうが、この日ばかりは天誅の為に我らも不本意ながら、さりげなく朝から彼の機嫌を損なわないよう気を配っていた。 ここで居心地の良い他の部屋に逃げられては計画が水の泡なのだ。 その甲斐あってか、池江は何の疑いも持たずに 池江 「俺、テレビ観ながら寝るから真ん中の布団な。」 などと、この部屋における自分のスペースを確保したもんだから、 三大神、ほくそ笑む ほくそ笑む。 そして遂に機は熟す──。池江が風呂に出たのをキッカケに我々は着々と段取りを開始したのであった。 【長いので後編へ続く】 2005.7.6
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