〜エロゲーム〜


エロゲームというものがある。

PCでのエロゲーム?それともPS2でのエロゲーム?

答えはノー。機械ごときが己の欲望に一方的に応えてくれるそれらにはゲーム性がない。

駆け引きや辛抱などあったとしても所詮は茶番である。

では実際の女性に対してのゲームか?

ノンノン。私に言わせれば全くの的外れ、お門違いである。王様ゲームなんかただのセクハラではないか。ゲームではなく快楽の追求だ。

ではどの様なゲームが真のエロゲームと言えるのか?答えは私の大学時代にある。
 
 



20歳ソコソコであった私やその友人達2人。刺激に飢え、

『誰のナンパ成功率が高いか』

などと騒いでは、夜な夜な街に繰り出しては女の子に声をかけたり、

『ゴルフ場乱開発に対して天罰を下すのだ』

と深夜のゴルフ場に忍び込みグリーンのカップに小便のホールイン・ワンをしては逃げていた。(時効ですし反省もしています!!!

それでもなお満たされぬ心。成人しているとはいえ、恐いもの知らずであった我々は常に刺激を渇望していた。

そんな折り、何故か『皆でベストなエロビデオを探して観ようじゃないか』という話しになった。

自慢できる事ではないが、我々は既にエロビデオなどゲップが出るほど観まくっていた。いわば掘り尽くされた鉱山で何がベストなのか、という事に論点が集中し、議論は大いにもめた。

収拾のつかぬ事態に私はある一つの提案をする。

HUN「諸君、ここはゲームといこうではないか」

友人達「……?」

HUN「新作・旧作は問わない。自分が皆にお薦め出来る、と自信の持てる作品を一本ずつ借りてくるのだ。」

友人達「……?ザワ…

皆、まだ理解できずに呆気に取られている様子だ。私はそんな2人を後目に話しを続けた。

HUN「それをただ皆で観賞してもヒネリが無い。そこでそれらを使用した勝負をするの……」

友人A「待てHUN。それには無理がある。エロビデオでどの様な勝負が出来るというのか。」

HUN「まあ聞け。ルールを設けるのだよ。そのルールの元で観賞する。」

友人達「……?ヒソヒソ…」

HUN「勝負…つまり観賞中はチンコを触る事を一切禁ずるというルールだ。」

友人達(同時)「なにい!!

友人A「チョットでもか?!!

友人B「い、位置を直すのもダメなのか?!!

この様な質問が出る時点で皆ノリノリである事がうかがえる。既にやる気なのだ。

HUN「言ったはずだ。一切を禁ずる!だ。」

友人B「お…恐ろしい事を考える男だ……」

友人A「冒涜だ…。神の設計した人体に対する冒涜だ…

HUN「何も勃ったら負けとは言っていない。触ったら負け、という精神勝負だよ。」

友人達「し、しかし…誰も触らなかったら……?」

核心を突く良い質問である。しかし私は提案した以上、その様な質問が出る事も既に看破していた。対応策があったのだ。

HUN「うむ。良い質問だ。その場合は早く勃った方の負け、となるだろうな。」

友人達「おおおおー…!

話しがまとまると同時に、まるでルパン一味の如く小さな車に一斉に飛び乗る我ら3人。

キュキュッ!とタイヤを鳴らして格好良く発進するこの車がエロビデオを借りる為に動き出したとは誰も思うまい。

行き付けのレンタルビデオ店に到着した我々は声を交わすことも無く、散り散りに物色を開始する。

触らずの精神力勝負で、ある程度の伯仲は目に見えていた。

となれば若造であった当時の我々がコントロールの困難であったスタンディングタイムが勝負の分かれ道になる。

彼等はそう読み、手っ取り早く絡みシーンの多そうで、かつ自分好みの作品を手にした。

しかし、私の目的はあくまで奴らの精神を屈服させることのみ。このゲームの本質はそこにあるからである。

既に待機している友人達をよそに、時間をかけてとある作品を探した。過去に出会った記憶に残る素晴らしき作品を……。
 
 



そして時間は経過し、我々3人はレジに立っていた。

まるで戦地に赴くソルジャーのような表情をした男共がそれぞれにエロビデオのみをカウンターに置くのだから、レジのお姉ちゃんはさぞかし恐怖したであろう。

3人「……サンキューな」

お姉ちゃんにそう言い残し颯爽と去っていく我々。後ろ姿だけ見れば池田屋突入直前の新選組の空気を漂わせているが

ただのアホ丸出し

である。

家路へ向かう車内では誰も口をきかなかった。そう、この時点で既に

好敵手であり、勝負は始まっているのである。

唯一交わされた言葉が

友人A「お前ら……イクぜ?」

HUN&友人B「……フン!」(黙殺

であることから我々の本気ぶりが読者の皆さんにも伝わるであろう。

私のアパートに着いた後、私は勝敗を巡ったトラブル防止の為に、ルールと判定の詳細を生協のチラシの裏に書き出すことにした。
 
 

*対決は2対1制。

*審判役の1人が提示した作品を残りの2人が観賞する。

*観賞する2人はイスに座り、両手を後ろで組むものとし、これをスタンダードポジションと呼ぶ。

*勃起した場合は滞りなく「スタンド」と自己申告し、審判がそのタイムを記録する。
※雄として恥ずかしくないフェアープレイをする事!

*「もう触ってしまうかも」という時点で後ろに組んでいた両手を解き、両掌を頬に当てるものとし、これをムンクポジションと呼ぶ。
※これは審判がタッチ判定をし易くする為の措置です。

*チンコを触った時点でスタンドタイムに関わらず、その者を敗者とする。

*チンコタッチをする者が出なかった場合、スタンドタイムの最も早い者を敗者とする。

*1試合毎にクールダウンとして15分の休憩時間を設けるがトイレは不可とする。
※開幕戦後、全ての勝負が終了するまで例外無くトイレに行けませんので事前に済ませておきましょう。

*その他、不正が発覚した場合は他2人分のレンタル代金全額を補償するものとする。

*審判は判定することを第一に考え、決して判定を忘れて一緒に観賞していたなどという事の無いよう、心掛ける。


 

明確化されたルールの元で他の2人は些か「これ程までに厳格な勝負だったのか」と言わんばかりの厳しい面持ちだ。

先攻は友人A。

車内で唯一、自信を露わにした人物なだけに私と友人Bは多少身構えた。

友人A「セット!スタンダードポジション プリーズ!

もう、こんな下らないことでノリノリである。

そしてビデオカセットがデッキに吸い込まれる……。

のっけから流れたタイトル。十数年前の事なので私の記憶も定かではないが、確か

潮吹きバズーカ

こんな感じだったと思う。(笑)

良く言えば巨乳、悪く言えば……いや、それは言わずとも読者諸君は察しがつくであろう。その女優がお肉を波打たせ、とにかく絡みシーンばっかりの作品であった。

美しくない作品である。

友人A「スタ〜〜ンド?!!!」(指さし確認

友人B「ノー。」

HUN「バカが。正気か?」

友人A「なにゆえ!!!」

HUN「この乳輪はなんだ。ミニCDではないか。」

友人B「デカけりゃいいとでも思っているのか。あほ。」

序盤から大荒れの開幕戦。

巨乳派の友人Aは自分の物差しで我等を測った、それが惨敗の原因であろう。「なんでオマエ色に染められなアカンねん。」と我等は戦いの最中にクールダウンしていったのだ。

出鼻を挫かれた友人Aはカセットを巻き戻すこともなくスゴスゴと友人Bとバトンタッチし、スタンダードポジションに入った。

規定により15分間の休憩があるハズだったが、私と友人Bが不必要と判断した為すぐに次の試合に突入したのだ。

私は最初からこの友人Bが最大の難関と読んでいた。私の雄の部分をよく知っている。

流れ出るタイトル。それも曖昧だが、

ファック トゥ ザ  ティーチャー

みたいな感じであったと記憶している。もちろん、タイムマシーンのスポーツカーも登場しなければ白髪の科学者も出演しない。

先程とはうって変わった可愛らしい容姿で、私好みの小振りな乳の女優が女教師に扮して生徒役の男優と絡んでいくストーリーである。

開始数分後、自信たっぷりに指さし確認でコールを要求する友人B。

友人B「ステァ〜〜〜ン?!!!」(こぼれそうな笑顔!!!

友人A「スタンド!!!スタンド!!!

HUN&友人B「お前はどんなんでもいいのか?!!」(驚愕

陳腐なストーリーと、演技とは言えぬそのセリフ棒読み加減が若干の時間稼ぎになったものの、明らかに私をターゲットに絞った女優セレクトのせいで遂に

HUN「くっ……!!!ス、スタンド……。」

と、ポイントを許してしまうことになった。

そうだろう、そうだろうと言わんばかりに頷きながらタイムを記入する友人B。

しかしこの勝負はこれで決まらない所がキモである。

結局、両者ともチンコタッチには至らずに勝負は終了したのである。

本日初の休憩タイム。

言葉少な目にインターバルを取る選手達。

次の試合が審判役という事で私はタバコを吸うのも余裕綽々である。

私には自信があった。私が選んだそれは残念ながらタイトルも女優名すらも記憶していないが、セレクトコンセプトが明らかに先攻の2人とは一線を画していたのだ。

HUN「時間だ。選手は速やかにスタンダードポジションに就きなさい。」

静かにそしてゆっくりとカセットを挿入する……。

ウ〜〜ン…ガチャッ……サー……

ゆっくりと流れる時間。そしてこれから始まる奇跡の物語……

ストーリーは男優と女優が丸2日間、プロデューサーから「(エッチは)しなくても構わないよ。でも過ごす時間はこれに全て収めて。」と預かった1台のカメラを持ち、一切のスタッフを排除した2人きりで恋人になりきって過ごす。というものである。

ノーストーリー、ノープランのドキュメント。

最初はぎこちなく、何を話したら良いのかも手探りの2人。「いきなりエッチ」というものではなく、レンタカーでドライブしたりボートに乗ったりというデートをしていくうち、次第に心が通っていく。というとてもリアルな物語なのである。

序盤はひたすらデートをしたり食事をしたり…。途中、多少初体験の時期とかそのシチュエーションを質問したりというシーンもあったが、とても絡みシーンの出現を望めないものではあったが、そのストーリーのないリアルさが後に功を奏する事になる。

食事を終えてペンションに移動した男優と女優。

男性経験の数なんかを訊いたりしてふざけ、ジャレているうちに目が合い、沈黙……そしてキス。(お約束!!!

決してハードなキスではない。AVのクセに何とも照れくさそうに、そして小鳥のように軽く唇を合わせる2人。

一方、友人A&Bは自らの初体験と重ねているのか口ポカン状態である。

まるで食虫植物のようだった。

画面の中では遂に行為が始まった。

始まるや否や、友人A&Bはほぼ同時にスタンドコール。

空腹に勝る御馳走なしとはこの事であろうか。

だがここまでで時間をかなり費やした為に、スタンドタイム勝負では友人Bに遠く及ばない。

私が勝利を収めるには逆転のチンコタッチしかないのだ。

そんな時、友人Aは私にバレないように両足を内股気味にし、微妙に足を動かして股間へ刺激を与えだした。

これはいけません。深刻な反則です。

HUN「審判を欺く行為に該当します。ただちに内股を止めなさい。さもなくば失格と見なしますよ?」

私の指導に一瞬不満そうな表情も見せたが、やるせなさそうに

友人A「ムンクポジション……」

本日初の第二形態である。これは大きな進展と言えるのではなかろうか。

画面の中では、机なのかベットの脇かは判断できないが、無造作に置かれたビデオカメラを意識するようにチョット毛布で隠れてキスしたりする男優と女優。

これは技ありの行為です。まさに逆転の発想といえるエロシチュエーションなのです。

視聴者の覗き願望をも満たすこの仕草により、難関の友人Bもいつの間にかムンクポジションに入っていた。

モザイクに頼り、股オッ広げのズームアップ画面ばかりが垂れ流しのエロビデオが横行する昨今、かような演出は偶然の産物であり、大いに選手達を刺激した。

審判の私ですら数瞬の間、画面に目を奪われており、ふと選手達に視線を戻すと両者は股間に手を置いていた。メイクドラマ!!!

まるでマリリンモンローの如く…である。

しかし、下品にモゾモゾと動かすような無粋な真似をする者はいなかった。

例えて言うならば、控え室でセコンドが試合に敗れたボクサーに「また次があるさ……」そう言いながら肩にソッと手を置く。といった感じなのである。

ビデオではエピローグ。

女優が密度の濃い時間を共に過ごした男優に、本気の涙を流しながら「ありがとう……さよなら…」と呟き、カメラに背を向けて隠すように別れを惜しむキス。

幾分か潤んだ瞳で友人達は私に呟く。

友人A「ギブ……チャンプ」

友人B「グッジョブ…HUN……」
 




こうして私は初代チャンピオンとなった。

チャンピオンとなった私の栄誉を称えてくれた彼等が、借り物のビデオカセットのラベルテープの下に小さく

『初代チャンピオン・HUN(の本名)』

と書き記したという事実は後日知ることとなった(大迷惑!!!)のだが、取り敢えずその名作ビデオは期日に返却されることなく、友人AとBの家に連泊していったのであった……。

真のエロゲーム。それは男のプライドを賭けた性器の対決とも言える硬派な娯楽である。  


2004.1.21


これが流行ったらどうしよう。